Water Margin (4)
1109 年 3 月
鄆城の宋江の屋敷を自ら尋ねるのは、実はこれが初めてだと気付いた。石勇を経由した書簡のやり取りで済ませることが殆んどだ。ここに来たのも宋江からの呼び出された時だけだ。
屋敷には侯健が居た。江州で仕立屋をやっている。宋江と同年であったはずだ。その正体は済州と江州の道の繋ぎである。つまり李俊と宋江の繋ぎである。
「侯健殿ではありませんか。鄆城にまでいらっしゃるというのは、また何用でございましょう」
「晁蓋の手の者が李俊殿と宋江殿の繋がり探っている気配がある。そういう話を宋江殿に届けに来たのよ」
「ともすると、李袞ですか。林冲などもその動きを気にしております」
「そうだ。これまでとはまるで違った動きをしている。見ると宋江殿と李俊殿に何か道が無いか、そういうこを探っておるな。かつてより遥かに手強くなったな。誰かが後ろに付いているとしか思えないな」
「李袞の後ろにいる者については、時遷も林冲達も必死で探っております。薛永などは西に行ったようでありますし」
「それは李俊殿も同じよ。騙し合いを続けているがなかなか尻尾を出さん。薛永などでは無いな。もっと出来る男が南を探っておる。上青など公孫勝の動きを疑っておる程だ。まあ、尻尾を出しておらんのは李俊殿も同じであるが」
「宋江殿と李俊殿の間の道を探っているというのならば、矢面に立っているのは侯健殿となりましょう」
「みくびるなよ、戴宗。私を誰だと思っている」
「これは、申し訳ありません」
「よい。では私はこれで行かせて貰うぞ」
侯健は去っていった。挙措がはっとするほど俊敏である。手足が長いこともあって、影では通飛猿などと呼ばれていると聞いたことがある。
宋江の従者から部屋入るようにと呼びだされた。
「戴宗、お前から会いたいと言ってくるのは珍しいな。何かあったか」
「いくつかございます、それもどれも微妙なことばかりでして」
「では言ってみろ」
「まずは北京大名府の動きです」
「北京大名府か。塩のことでは無いということか」
「直接の関連はありません。しかし、全く無関係ということは無いのでして。北京大名府の廬俊義という大商人のことは御存知と思います」
「玉麒麟などと呼ばれている男だな。かなり派手に商売をやっている」
「その廬俊義のところの李固という男が、蔡京の屋敷に頻繁に出入りしているようです」
「賂の相談かな。それだけでは珍しいことではあるまい」
「しかし何か不自然なものを感じました。直感です。それで調べてみたのですが、廬俊義は太原府の軍管区の軍需物資の横流しを受けています。確証はありませんが他の軍管区からも横流しを受けていると見てまず間違いは無いと思います」
戴宗はさらに言葉を繋げる。
「蔡京は実際には軍需物資の取り扱いなども掌握しています。その蔡京と廬俊義が繋っているとなれば、一つでしょう」
「軍需物資の横流しを受けた廬俊義がそれを蔡京を通じて再び軍に売ることで還流させようとしている、というところか」
「まだ確証はありません。ですが私の読みもその辺りです。」
「その話は承知した。話は二個あると言ったな。もう一つは何だ」
「これは林冲からの情報なのですが」
「秦明のことであろう。林冲から直に報告を受けている」
「左様でしたか。それでしたら話は早い。此度は私の意見を申し上げようと思っていたのです」
「意見か。お前がそういうことを俺に言うのは初めてだという気がするな。聞いてみようではないか。言ってみろ」
「先ず廬俊義と結び、そして柴進は排除する、そういうことです」
「なぜ、逆ではないのか、考えを聞こうか」
「今我らは北京大名府に力を持てていません。廬俊義と結ぶことで北京大名府に力を持つことができましょう。塩や人の動きももっと複雑なものに出来ると思います。それに我らと廬俊義には蔡京という結節点があります。」
「では柴進についてはどう考えているのだ」
「柴進が扱っているのは我らと同じ塩です。しかも秦明という男を引き込んでいる。軍事力を持っている。しかも滄州を拠点とする柴進と我らの縄張りは近い。というより重なっていると言っていいと思います。今は二竜山の真の姿は読まれていまいでしょうが、いずれ二竜山と秦明の青州軍は正面からぶつかることになる。しかも秦明には二竜山を盗賊討伐という形で正々堂々と攻撃することが出来ます。やろうと思えば東平府の軍管区の支援を受けることも出来ましょう」
「つまり柴進が秦明の力で二竜山を潰し青州の塩を自らの手中に入れようとしてくるだろう、その前にこっちから柴進を潰してしまえ、ということか」
「そういうことです」
「全体としては適当な意見であろうな。廬俊義についてはそれでいいだろう。接触はお前の方でまず試みよ。蔡京という共通項もある。柴進については何とも言い難いところがある。これについては俺が自分でやる。林冲への指示も俺から出そう」
「分かりました。では私はこれで」
「おう、では任せたぞ」
恩州に気になる動きがある。時遷と直接話したいこともある。まずは、恩州だろう。
*目次/注釈
http://ssig33.g.hatena.ne.jp/ssig33/20090126/1232979880